前のページへ戻る

岡田敦【プロから学ぶ作品づくり〜第1部】

2010.04.07

第1部:撮影について

■岡田敦氏プロフィールはこちらをクリック

【機材を選ぶ】

 作品をつくる上でまず初めに考えることは、どの機材で撮影をするのかということだ。デジタルカメラがよいのか、フィルムカメラがよいのか、作品をつくり始める前にはいつもそんなことを考える。フィルムカメラの場合は、35mmカメラがよいのか、中判カメラがよいのか、どのフィルムを選ぶのかということもとても大切なポイントになる。

 デジタルカメラで撮影をすることが一般的になった現在だが、僕の場合、作品によってはフィルムカメラを選択することも多い。カメラの操作性、表現性、最終的な出力の方法や発表の媒体、被写体との相性も考えて最終的な判断をする。作品をつくり始める前に、まず使用する機材を選び、出力するサイズや方法、発表する媒体まで考えて撮影に挑むのだ。

 例えば2010年に発表した『ataraxia』(アタラクシア・青幻舎)という作品は、全ての写真をHASSELBLADで撮影した。フィルムとデジタルバックを併用したが、『ataraxia』という作品には、写真集のクオリティを保つうえでも中判カメラが必要だと考えた。HASSELBLADは中判カメラの中でもとても優れたカメラである。

 僕は一冊の写真集をつくる時に、カメラやレンズをあれこれ変えるということはほとんどしない。フィルムも作品によって統一していることが多い。『ataraxia』という作品には、発色のよい富士フイルムの「Velvia100F」を使用したが、木村伊兵衛写真賞を頂いた『I am』(2007年、赤々舎)という作品には、柔らかな階調表現に優れている「ASTIA100F」を使用した。ひとつの作品をつくる時に、機材をあれこれ変えてしまうと、写真集としてまとめる時や、写真展として発表する時に、統一感がなくなり、後々困ることが多いのだ。作品の本質とは関係のないことだが、写真の勉強をする上では、写真家がどのような機材を使って撮影をしているのかを気にしながら写真集をみてみるのも面白いのかも知れない。

写真集『ataraxia』で使用した機材↓
左からSEKONIC露出計(ZOOM MASTER L-508)、Makro-Planar 4/120、HASSELBLAD 503cx + Planar 2.8/80

岡田敦連載1-1
【撮影の手順】

 使用機材が決まったら、撮影に出かける。もちろん作品をつくる場合には、撮影の前に、何度もテスト撮影を繰り返す。僕が写真集などで発表している作品は、撮影期間が何年にもおよぶので、最初の機材選びはとても重要である。だが、最初に機材を決めてしまえば、撮影に持っていく機材がとてもシンプルになり、荷物も厳選され、身軽になる。長く写真を撮り続けるには、そういったことも重要である。撮りたいものが決まったら、まずは使用機材を厳選する、これが僕の作品づくりの原則だ。

 撮影時に心がけていることは、いかに自分の頭の中にあるイメージを視覚化するかということだ。芸術に答えはない。無知であることはいけないが、知識に縛られ、自由な発想ができなくなることは更によくない。イメージを膨らませ、絞りやシャッタースピードを駆使し、光をとらえて作品をつくるのだ。

『東京カレンダー』2010年5&6月号より
「雪の果て」OKADA Atsushi, 2010↓

岡田敦連載1-2
次回のテーマは「画像処理について」。5月公開予定です。