前のページへ戻る

岡田敦【プロから学ぶ作品づくり〜第2部画像処理について-2】

2010.06.18

第2部:画像処理について-2

「第2部:画像処理について」は、予定を変更して2回に分けてお届けしており、今回が2回目です。

■「第2部:画像処理について-1」はこちら

岡田敦プロフィール写真

■岡田敦氏プロフィールはこちら

【画像処理にまつわる注意点】

 画像処理にまつわることで大切なことは、画像処理の際に使用するモニターのカラー調整だ。キャリブレーションがきちんとされていないモニターでいくら写真の色調やトーンを調整しても、それは色つきのサングラスをかけながら作業をしているようなもので、正確なデータづくりは難しい。最近のデジタルカメラは液晶モニターの質がずいぶんよくなってきたが、やはりデジタルカメラを使って作品づくりをする場合は、RAWデータの現像時に、キャリブレーションの管理がきちんとされているモニターを見ながらデータをつくっていくのが前提だ。カメラやレンズにこだわるぐらい、使用するモニターにも気を使わなければいけない。レンズを一本買いたす前に、モニターの購入を考えてみるのもよいのかもしれない。

【モニターのキャリブレーション】

 
 僕が実際に使用しているモニターは、EIZOのカラーマネージメント液晶モニター「ColoeEdge」シリーズだ。モニターのキャリブレーションと聞くと、とても難しそうなイメージがあるが、「ColoeEdge」シリーズは付属のキャリブレーションソフト「ColorNavigator」を使用すれば、短時間で簡単にキャリブレーションをすることができる。

blank

 僕の場合、モニターのキャリブレーションは、月に1回はおこなっている。大切な作品の画像処理をする場合は、必ず事前にモニターのキャリブレーションをおこなうようにしている。日中は太陽光や電球の光の影響を受ける可能性があるので、キャリブレーションは夜間に作業場の電気を消しておこなっている。厳密にいうと、モニターに電源を入れた直後と、数時間経ってモニターが安定した状態でも結果が違うようだ。

 厳密な色再現が必要とされる現場では、キャリブレーション対応型のモニターは必需品である。インクジェットプリンターで出力する場合でも、モニターをきちんとキャリブレーションしておけば、プリントで失敗することも確実に少なくなる。

【ファイルの管理】

 デジタルカメラで作品を制作するようになると、フィルム代がかからないということもあって、カット数が膨大になってしまうことが多い。フィルムの場合は、作品ごとにファイリングし、撮影日順に整理をしておけば、どこにどのフィルム(写真)が保管されているのかはおおよその見当がつく。本棚にまとめておけば、ふと目にとまった本をなにげなくめくってみるように、過去に撮ったフィルムを見返すことがたまにあるので、写真集や写真展で使わなかった写真であっても、自分が撮った写真のことは比較的鮮明に覚えている。たとえ5年前に撮影した作品のポジやネガであっても、必要な時は意外とすぐに探し出すことができるものだ。

 しかしデジタルの場合は、データの管理がなかなか難しい。作品や仕事で撮影したデータは別として、忙しい時は見返すこともせず直接外付けハードディスクにRAWデータを保存してしまうことがある。いわゆる撮っただけで満足してしまい、いつか時間ができたら整理しようと思いつつ、そのうちどこに保存したのか、どんな写真を撮ったのかも自分自身で忘れてしまうのだ。一般家庭の家族写真や記念写真はとくに、フィルムカメラが全盛期だった時の方が、きちんとアルバムに整理され、家族の成長とともにページを増やしていっていたのかもしれない。5年、10年、20年という長いスパンで写真を撮ることを考えた時、デジタル写真の場合はとくに、ファイルの管理をきちんとしておくことが大切な要素になってくるのだと思う。

 僕の場合、作品や仕事のデータは、年代ごと、シリーズごとにフォルダ分けをするようにしている。ある程度容量がたまったら、外付けハードディスクにデータを移し、他のハードディスクにもバックアップをとっている。作品のデータは、RAWデータを現像する時に、写真展でも使えるような容量の大きな16bitのTIFデータと、2Lサイズの小さなJPGデータを一緒に作るようにしている。小さなJPGデータは、写真展のレイアウトや、写真集の構成を考える時にとても作業がはかどり便利である。ホームページや、小さなサイズでのメディアへの掲載も頻繁にあるので、大きなデータをその都度リサイズする手間が省け、作業の効率が上がるのだ。ファイルの管理はシンプルに見やすく、他の人が見てもわかるぐらいに整理しておくのがベストだと思う。

blank

次回予告【プリント作業について】


■良いプリントとは。岡田さんのプリントに対するこだわり
■IJプリントとその他のプリント(銀塩など)の違い、IJプリントの魅力
■普段使用しているプリンターとその選定理由、プリンター選びのコツ
など。インクジェットプリントの奥深さが学べます。

第3回:プリント作業について-1